希薄化とは? なぜステーキング利回りから引くのか

当サイトの比較表には「希薄化調整後利回り」という、他では見かけない項目があります。なぜそんな計算をするのか、その説明です。

結論から言うと、取引所が出している年率をそのまま比べても、増えたことにならないからです。

増資を思い出してください

ある会社が1億株を発行していて、あなたはそのうち100万株、つまり1%を持っているとします。

この会社が増資して、株数が1億1,000万株になりました。あなたの持ち株は100万株のままです。すると持ち分は1% → 0.91%に下がります。株数は1株も減っていないのに、会社に対する取り分は減りました。

これが希薄化です。株をやっている方には馴染みのある話だと思います。

暗号資産でも同じことが起きています

ステーキング報酬の主な原資は新しく発行された通貨です。誰かの利益を分けてもらっているのではなく、通貨そのものが増えています。

コスモス(ATOM)を例にします。この通貨は1年で総発行量が10%増えます。これはブロックチェーンの公式データで公開されている数字です。

一方、取引所で受け取れる年率は13.9%(手数料控除後)。並べるとこうなります。

もらえる報酬 = 年 13.9%

通貨全体の増加 = 年 10.0%

実際に増えた持ち分 = およそ 3.5%

13.9%という数字が嘘なわけではありません。枚数は確かに13.9%増えます。ただ、通貨全体も10%増えているので、持ち分の比率としては3.5%しか増えていない、ということです。

額面が低い通貨のほうが、実は有利なことがある

この調整をすると、順位が入れ替わります。実際のデータで見てください。

銘柄 手取り年率 新規発行率 希薄化調整後
コスモス(ATOM) 13.90% 10.00% +3.55%
ソラナ(SOL) 5.00% 3.71% +1.25%
イーサリアム(ETH) 2.00% 0.80% +1.19%
カルダノ(ADA) 1.40% 2.06% −0.64%

イーサリアムを見てください。額面は2.0%しかなく、17銘柄中13位です。ところが新規発行が年0.80%しかないため、調整後は3位まで上がります。

イーサリアムは取引手数料の一部を焼却する仕組みを持っていて、発行された分がかなり打ち消されています。だから額面が低くても、持ち分はしっかり増えます。

逆にカルダノ(ADA)はマイナスです。1.40%もらっても通貨が2.06%増えているので、持ち分は減っていきます。

計算式

単純な引き算ではなく、割り算を使います。

希薄化調整後利回り = (1+手取り年率) ÷ (1+新規発行率) − 1

ATOMで計算すると、1.139 ÷ 1.100 − 1 = 0.0355、つまり3.55%です。引き算だと3.90%になりますが、それだとわずかに大きく出ます。この分野の国際的な基準サイトが採用しているのが割り算のほうなので、それに合わせています。

ロック解除は「発行」に数えません

ひとつ、間違えやすい点があります。

暗号資産には、発行済みだけれど一定期間動かせないよう凍結されている分があります。これが解除されると、市場に出回る量が増えます。これを「発行」に数えるべきか、という問題です。

数えません。すでに存在している通貨の拘束が解けただけで、総量は増えていないからです。あなたの持ち分の比率も変わりません。この扱いは、海外の主要なデータ提供元3社すべてが一致しています。

ただし、市場に出回る量が増えれば売り圧力にはなります。持ち分は薄まらないが値下がりしやすい、という状態はあり得ます。希薄化とは別の話として区別してください。

どこから数字を取っているか

新規発行率は、すべて各ブロックチェーンの公式データによるものです。

  • コスモス(ATOM)・ソラナ(SOL)・ニアー(NEAR)は、各チェーンが公表している発行率
  • イーサリアム(ETH)・カルダノ(ADA)は、公式データからの実測
  • スイ(SUI)は総発行量が100億枚で固定されており、報酬は既発行分から配られるため0%

残る11銘柄は、公式に過去の記録が残っていないため、揃い次第そのつど公開します。取れないものを推測で埋めることはしません。

ステーキングでお得な「置き場所」はこちら

同じ銘柄でも、どこに置くかで手取りが変わります。17銘柄について、手数料を引いた後の年率と希薄化調整後の利回りを並べました。SBI VCトレードとGMOコインの両方が扱う5銘柄は、すべてGMOコインのほうが手取りで有利という結果です。イーサリアム(ETH)は、bitbankを加えた3社で比べられます。

→ 17銘柄の比較表と、口座の選び方を見る

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